手脚のないお姉さん

子どもの頃、うちの裏手を少し進んだところに、同じ苗字の家がありました。
うちと一番地違いの住所だったので、ときどき、その家の郵便物が
誤配されてくるのです。

「間違えてきてましたって、届けてあげてね」

祖母にそう言われ、同じ苗字のおうちに届けられるはずだった郵便物を運ぶのは、
主にわたしの役目でした。
その家には、5,6歳当時のわたしから見れば「お爺ちゃん、お婆ちゃん」という
外見のご夫婦が暮らしていました。

玄関の引き戸をカラカラと開け、「こんにちはー」と中に声をかけます。
狭い玄関は小さな板の間に続いており、すぐに畳敷きの通路兼居室のような造りに
なっていたと記憶しています。
その畳敷きの部屋は二畳くらいの広さで、小さな文机と電話台があり、
当時はそれしかなかった黒電話が置かれていました。
玄関を入ると、そこまでは正面に見えていたのです。

奥へと続く敷居には襖があり、細く開けられていました。
わたしは身を乗り出して、その隙間のほうにもう一度声をかけました。
「こんにちはー。郵便です」
奥からおばさんが出てきて、受け取ってくれるはずでした。
家の中はしーんとしています。
お留守なのかと思い、また後で来てみようと思ったとき、女の人の声が
きこえました。
「はーい。ちょっと待ってください」
おばさんの声ではありませんでした。
もっと若い、きれいな声です。
このうちの家族構成を知らなかったわたしは、おじさん、おばさんの他にも
誰か住んでいたのだろうかと、少し緊張しました。
畳の上を、誰かが近づいてくる音がきこえます。
でもそれは、普通に歩いているような音とは、少し違っていました。
「おまちどおさま」
細く開いた襖に身体を割り込ませるようにして、そのお姉さんは現れました。
そのお姉さんの姿を見たとたん、わたしは自分のからだが硬くなるのを感じました。
見てはいけないのかもしれないひとが、そこに立っていました。
胴体と頭だけの人間。
そのお姉さんには、腕と脚がありませんでした。
肩から直接生えているような小さな手。
ごくごく短い、脚といえない肉の先にある、小さなはだしの足。

「ありがとう……ゆうりちゃん?」
お姉さんはにこやかに言いました。わたしの名前を知っていてくれました。
「はい。ゆうびん、きてました」
どうやって渡せばよいのか、その小さな手で封書を持つことができるのか、
まったく想像できませんでした。
ドキドキしながら手を伸ばすと、お姉さんは身体を少しよじって、
肩から生えている手の指で、普通に封書を持ちました。
「ごくろうさま。おばあちゃんによろしくね」
ぱあっと、明るい笑顔でした。
わたしはその笑顔を見て、なぜかテレビで見た仏像や観音様を思い出しました。
お姉さんはそのままわたしが玄関を出るまで見送ってくれました。

ずっとドキドキしていました。
家に戻り、静かに興奮しながらお祖母ちゃんの姿を探しましたが、
買い物にでかけたのか、うちには誰もいませんでした。
キッチンに行って、冷蔵庫の中から飲み物を出し、コップに注いで飲みました。
飲みながら、あのお姉さんはどうやってコップを持つのだろう、と思いました。
そして、母のドレッサーの前に立ち、腕がぎゅうっと身体につくように
折り曲げて、肩から手が生えているような真似をしてみました。
それだけでは腕が鏡に映ってしまうので、服の身頃の中に折り曲げた腕を入れ、
手首から先だけをだして、コップを口に近づける動作をしました。
それは、初めて見る、異なった形の自分でした。
もし、わたしにも腕がなかったら? 脚がなかったら?
幼稚園には行かれたのかな。
ひとりでお風呂にはいれるのかな。
ご飯のときはどうするんだろう。
お買い物の手伝いは?
ママと手をつないで歩けるの?
弟をだっこできるの?
わからないことが、頭の中にいくつも浮かびました。

あのお姉さんは、どうしてるんだろう……。

初めて会った、手脚のないお姉さんのことが強烈に目に焼きついて、
また会いに行きたくて、つぎの誤配はいつだろうと、郵便屋さんが
間違えてくれるのを願いました。






お姉さんと遊ぶことを妄想した

知らないうちに死んでた
小さい遺体はかわいかっただろう
お花に埋もれて少女のままで
庭に咲いてた花をおばあちゃんに切ってもらった 供えた

室井さんの絵
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[ 2011/06/13 00:50 ] おもいで | TB(-) | CM(-)

一番イヤだった縄

やっぱり麻縄が一番好きです

と、前々回の記事に書きましたが、では、縛られてイヤだった縄は
どんなものだったのか……
今回は、それを書きます。

縄自体がイヤ……ということももちろんありますが、きっとそういう時って、
縛った人がイヤだったのだと思います。
下手だとか、偉そうだとか、何か勘違いしてるとか・・・
相性の問題かもしれません。
でもやっぱり、自分が縛っている相手の女性の身になってほしい、と
思うことはいっぱいあります。

「綿ロープは柔らかい」と、思っている方は多いと思います。
実際、よくSMクラブなどで使われているようなあの白とか赤い縄は、
手触りも巻きついた感触も、柔らかいイメージです。
でもあれは、意外に伸びるんですよね。
だから、伸びた分だけ細くなり、きつく縛ると余計に皮膚に食い込みます。
細くなって食い込むと、見た目も綺麗じゃありません。
縄の存在感があいまいになってしまって。
それに食い込んできつかったわりには、手首に残る痕も薄ぼんやりとしていて、
解かれたあとの余韻とか満足感とか、ない縄だと思います。

それから、綿でも硬~いのがあります。
手首でも足首でも、胸やお腹でも、その硬い縄は皮下脂肪や筋肉を通り越して
骨にダメージを与えてくれちゃいます。
毛細血管もつぶれやすくなるのか、皮下出血もできやすいです。
あの硬い縄で吊られたりすると、もう本当に直接骨をゴリゴリこすられて
いるようで、とっても辛いです。縄酔いなんてありえません。

あと、周りをコーティングしてある縄。
あれは本来何に使われるものなんでしょうかねぇ。
縛られた感じは、柔らかい綿ロープと似ているのですが、
解かれるとき……これも縛る人の下手さが問題なのでしょうが、
勢いよくスルッとひっぱったりすると、皮膚に擦れた部分が
高温になって、紐状の火傷になります。
これは本当に、ご注意願いたいです。
麻縄でも綿ロープでも、皮膚の上を強く早くひっぱると、
縛られていた人は火傷をしてしまいます。
一番イヤだったのは、この縄かな……。
でも、やっぱり人ですね。
カッコつけてしゅるん、と縄を強くひっぱる・・・『俺かっけー』
と思っているのがミエミエな人は、こっちが痛い思いをしてるのに……って
イラーっとします。
やっぱり、縄の種類や、上手い下手よりも、『人』が大事ですね。

お互いに信頼できる相手と縛り、縛られることが一番いいのだと思います。

そして、縛られている最中も、解かれているときも、その後も、
肌に残った縄の痕、内出血した腕、擦れて皮膚破損した手首、
やっぱり麻縄が一番いいです。

一番イヤだった縄のことを書いていたのに、やっぱり麻縄がいちばん!
と、こうなってしまうんですね。

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[ 2011/06/06 01:20 ] 縛られること | TB(-) | CM(-)

あこがれのポアント

こどもの頃、バレエを習いたいと思っていました。
細長い手脚でシニヨンを結った少女たちを見ると、とても羨ましかったです。
「生贄」などの撮影のときに、いつも参加してくれていた人が、ある日
「悠理さんてバレエやってたの? バレエダンサーみたいな動きするね」
と言い、そうかな、ほんと? ととても嬉しくなりました。
そして、その一言がきっかけで、あるバレエ団のクラスに通い始めたのでした。

「大人になってから始めるバレエ」
「バレエストレッチ」
など、カルチャーセンターでもパレエ関係の講座はたくさんあるようですね。
わたしが通っていたクラスの担当講師は、ローザンヌで優勝した経験を持つプリマでした。
小柄で色白で、少し早乙女宏美ちゃんに似た感じで、とても可愛らしい先生でした。

レオタードに着替えて、レッスンが始まる前にそれぞれストレッチをします。
当時はいまよりもずっと身体が柔らかかったので、十分に筋肉を伸ばすことができました。
大勢の人たちと並んで鏡の前に立ち、バーレッスン。
それからセンターへ。
本当に初心者なんだなぁ(もちろんわたしもでしたが)と思えるような、隣の人の動きを
見ながらでないとできない人、毎回先生に注意される人などもいましたが、
すでに何年も同じクラスにかよっているような、ある程度「踊れる」人も中にはいました。

「ポアント持ってる人は履き替えてください」
センターレッスンの途中で、先生がそう言います。
ポアントとは、トゥシューズのことです。
わたしもポアントを履いて踊ってみたかったのですが、七歳の頃に足の骨を折っているため、
つま先で立ってジャンプしたりなどということは、到底できないのでした。

例会で写真を撮っていたときなど、スタジオの中ではいつもバレエシューズをはいていたので、
時々つま先で立って思いっきり伸び、高い位置から撮ることもありました。
でも、ほんの数十秒しかキープすることはできません。

今でも、バレエの公演には時々出かけます。
テレビでやっていれば録画して見ます。
やっぱり憧れです。
近くのカルチャーセンターの教室に、また通ってみようかな、などと思っている
今日この頃です。
でも、まずは身体を柔らかくしなくちゃなぁ。
ここ数年で、信じられないくらい硬くなってしまいました。 
これから、まだまだ頑張らなければいけないことが沢山あるので、
体力をつけて臨もうと思ってます。

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[ 2011/06/02 01:28 ] 日常 | TB(-) | CM(-)

縄にもいろいろありますが

今日は雨はやんだけれど、ずっとすっきりしないお天気で、
夕方近くになってから、急に日差しがつよくなったりと、にゃんずにとっても
不快な一日のようでした。

さて、たまには「縛られること」のカテゴリで何か書いてみようかな、と思いました。
この先、もうたぶん一生、誰かに縛られることなどないと思うのです。
改めて文字にしてみると、淋しいような、侘しいような、そんな気持ちになります。
でもまあ、わたしは縛りの「撮影」が好きだったので、それは当然のことです。
もうモデルをする機会もないと思うので……。

今までにどんな縄で縛られたかといえば、やっぱり麻縄がダントツで回数は多いです。
あとは綿ロープ……これには白・赤・ピンク・水色などがありました。
それから綿ロープをPPのような素材でコーティングしたもの、
荷造り紐、棕櫚縄、子供用の縄跳びに使うようなビニール紐など・・・
こうして書き出してみると、思ったよりも種類は多くありません。
なんだか、十種類以上はあったような気がしていたのですが、気のせいでしたね。
その中で、どの縄が好きかと聞かれれば、それはやはり麻縄です。

理由は……。
はて……?
こうして改めて「理由」を考えてみると、はっきりと他者に伝える言葉が見つかりません。
たとえば、色がいい・においがいい・肌に触れたときの感触がいい・・・など、
よく見聞きするような言葉では、当たり前すぎて逆にウソっぽいと言うか、
ちゃんと答えられていないような気がします。
きちんとした縛りをできる人はみんな、麻縄を使っているから……
もしかしたら、こういう理由かもしれません。
信頼できる「縄師」あるいは「縛り係」の方たちが使う縄だから、麻縄が一番好き
なのかもしれません。
それは、モデルとして縛られたわたしが、安心して身を任せることができる、
つまり全体重を預け、もたれかかっても吊り上げられて動いても、ずっと綺麗な
ポーズのままでいられる、撮影する人に求められる通りの、それ以上のことを表現できる、
そう感じるからなのかもしれません。
もちろん、わたしも麻縄のにおいは好きです。
その「におい」は、真新しい縄よりも、使い古され、何十人もの女性たちの汗や涙を
吸い込んだ縄の方が、より深みのあるにおいになります。それは当然ですね。
汗に濡れた縄に、スタジオの埃が絡み付いて一緒にしみこんで、一般的な意味の
「いい匂い」ではないのだけれど、わたしたちにとっては「いいにおい」なのです。
縛られ、縄を解かれたあと、自分の肌に残った縄のにおいを味わうのも、また好きです。

でも、「縄のにおい」では一度ものすごく困ったことがありました。
濡木先生の仕事で、ある現場へ出かけたときのことです。
そのときは、何人もの女の子が控え室にきていました。
その中で、縛られたのはわたしだけだったと思います。
その日先生が持ってきたのは、新しい縄でした。
もちろん撮影の前に何度も指で丁寧にしごき、表面の毛羽立ちを落として
柔軟に肌に絡みつくよう、先生が調整してきた縄でした。
現場の隅で最後の準備をする先生。
わたしは、ずっとそちらを見ていたわけではなかったのですが、
急に何かの匂いが漂ってきました。
化粧品のような匂いです。
先生の方を見ると、縄をポリ袋に入れて、男性化粧品(おそらく、ヘアリキッドか何か)を
袋の中に振り入れています。そして袋ごとよく手で揉んで、その液体を
縄にしみ込ませているようでした。
きっと、適度な油分・水分を与えて扱いやすくするためだったと思うのですが、
……無香料のものを使って欲しかった……。
撮影の最中も、自分の体温によって暖められた化粧品の匂いが立ち上り、
むせ返るような濃い匂いに包まれていましたが、本当に困ったのはその後でした。
控え室に戻り、着替えを済ませて待っていると、他の女の子が騒ぎ出したのです。

「ねぇ、なんの匂い?」
「誰のにおい? }
「つか、オヤジ臭くない?」
「あー、オヤジの臭いだよ」

わたしのそばに来ないでくださーい! と心の中で必死に祈りました。
あの時は、本当にとっても恥ずかしかった。
とても困った経験でした。

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[ 2011/06/01 03:47 ] 縛られること | TB(-) | CM(-)
プロフィール
春原 悠理 Youri Sunohara Facebook
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濡木痴夢男の緊縛美研究会の主宰です。
好きなもの:ねこ、チョコレート、雑多な読書、映画鑑賞

便利なものは苦手です。
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