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写っていないものを映す

緊美研で、濡木痴夢男が女性を縛る姿をずっと撮ってきた。
わたしが撮る写真やビデオは、そのまま商品として編集されるものだったので、
個人的な好みよりも、「緊美研らしい映像」か、「観る人に伝わるか」等を意識する必要があった。
時々、好みのモデルが登場すると、およそDVDのジャケットには使えないような、
主観的でマニアックなカットにフィルムを大量に費やした。
それらはわたしの秘蔵コレクションとして、今も大切に保管してある。

わたしがモデルとして初めて参加したその数ヵ月後、
小さなカメラを持参してきた、初参加の佐藤まゆみちゃんに写真を撮られ、
翌月の例会時には出来上がったプリントをもらった。
年齢的には大人だったけれど、まゆみちゃんはお下げ髪のよく似合う少女だった。
その少女のようなまゆみちゃんが撮影した写真は、
他の会員たちのどんな写真とも似ていなかった。

まゆみちゃんの目には、わたしはこんな風に映っているのか……

と不思議になるような写真だった。
直立したまま縛られたわたしの、ポアントで立った足だけ。
縄を解かれたあと、放心しながら床に横たわるわたしの、縮めた四肢。
首と、そこに墨で描かれた太い線のように走る髪の束。
どれも、わたしの一部なのだ。
縛られた状態での全身の写真は、他の機会でもほとんどなかった。
 (まゆみちゃんのお連れ合いは、わたしの背骨を好んで撮っていた)
でも、たとえそこに縄が写っていなくても、
まゆみちゃんの作品からは「縄の気配」が常に感じられた。
目には見えなくても、まゆみちゃんの写真を手に取ると、
そこには確かに縄が存在したのだ。
サービス判の小さな紙の中に、真っ白く浮き上がったわたしの肩口が見える。
その部分には縄の痕さえついていないが、すぐ下の二の腕に、
ぎっちりと食い込んでいるだろう麻縄が、息を殺しながら迫ってくるのだ。
モノクロのプリントを見つめ、わたしは胸が苦しくなるのを感じる。
すぐ隣で小動物のように愛らしく微笑むまゆみちゃんは、
実は嗜虐的な冷たい目で、わたしの反応を愉しんでいる。

そのあと、セーラー服にブルマ姿で縛られたまゆみちゃんを、
わたしは厳しく責めた。
わたしたちは二人とも、かなり厳しい縛りに耐えられるモデルとして重宝がられていたが、
それでも常に、相手を苛めること、責めることを想像していたのかもしれない。

そこに写ってはいないのに、モデルの感情や表情が、見る者の眼裏に鮮烈に映ってしまう。
まゆみちゃんにはもっとたくさんの写真を撮って欲しかった。
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[ 2017/10/21 14:57 ] 緊縛写真 | TB(-) | CM(-)

マリリン・モンロー そのままの魂を抱きしめたい

5年前に65歳で亡くなった叔母は、マリリン・モンローが大好きだった。
告別式の際、夫である叔父が棺に入れたレコードや写真集の中には、
現在では入手困難なものがいくつもあったらしく、
葬儀会社の人が
「勿体ないですよ!」
としきりに小声で訴えていたが、あれは「思い出の品」だからという意味ではなく、
「ネットオークションで高値が付く」ということだったのだと、最近思い至った。
一緒に灰になってしまうのに……と思ったのだろうか。卑しい人だ。
花に囲まれ、おだやかに横たわる叔母の閉じたまぶたが、
ピクリと動いたような気がした。とても可愛らしい女性だった。

1985年発売のこのワイン、1990年頃には事務所の近くで5千円くらいで売っていた。
だから当時はたくさん買って、親戚やお世話になった人へプレゼントしていたけど、
それが今はこんな値段で!!
転売ヤーって、思い出もなにもボロボロにししてくれちゃうなぁ。
マリリン・メルロー


いや、こんなことを書きたかった訳ではない。
わたし自身、特にマリリン・モンローが好きだということはなく、
いわゆる「普通に好き」で、「知ってはいる」程度の知識しかなく、特別な想い入れももちろんなかった。
でもその叔母のことを考えていて、しばらく前に観たマリリン・モンローの映画を思い出してはっとしたのだ。
その映画の中で、マリリン(役の女優)は
「母親は女の子に、こう言わなくちゃいけないわ。かわいいって」
と寂しげに言っていた。
「ママが精神病院に行ったあとは、里親をたらい回し」
「本当の父親が誰かなんてわからない」
そう話す彼女(マリリン本人)が求めていたのは、母親から愛されることだったのではないかと、
初めて思った。
結婚と離婚を繰り返しても、「愛している」と言ってくれる男のそばにいても、
心は決して満たされない。
その頃の彼女は、自分が何を必要としてるのか、きっと解っていなかったのだろう。
彼女が切実に欲しかったのは、やさしい母親の胸。
その温かさに抱かれて、甘いふわふわした夢を見ること。
髪を撫で、そっと頬を包んでくれる、ママのやさしい手。
意識の外に追いやったそれは、決して姿を現してはくれない。
だから欲しいのは、手に入れたいのは、注がれるべきなのは、
自分を求める男たちの、声や視線や、立場や富。
そう思い込んで、それらを差し出されることこそが
「愛される」ことだと錯覚しようとした。
でも、どんなに素晴らしい女優になっても、自分を騙すことはできなかった。

何でも緊縛と結びつけて考えるばかなひと。と思われるかもしれないが、
もしも、満たされない心を抱いて漂い続ける彼女が
緊美研に遊びに来たとしたら・・・
世紀の大女優でも永遠のセックスシンボルでもなく、
ただの、ひとりぼっちの寂しい女の子として緊美研に出会えたとしたら。
そんな奇跡が起こっていたら、
彼女はあの若さで死ぬことはなかっのではないかと、そう思うのだ。

マリリン・モンローでもノーマ・ジーンでもなく、
名前も立場も年齢も……何もかもを取り去ったそのままの彼女を
濡木痴夢男が縛ったとしたら。
溺れるように漂いつづける寂しい心を、チクチクした麻縄で抱きしめてあげられたら。
きっと彼女は、その繭の中で幻のママンと邂逅し、
いちばん欲しかった無償の愛を、存分に味わうことが出来ただろう。
そしてずっと長生きし、美しいまま可愛いお婆さんになって、
たくさんの人生を演じてくれたに違いない。

自殺だとか暗殺だとか、色々なことが言われているが、
きっと彼女は、これ以上年を取って、
外見の美しさが衰えてしまったら、
男からも女からも見向きもされなくなるのはわかっている。
そんな恐ろしい未来にはとても耐え切れないと、
残りの命を一晩で使いきってしまったのではないか、
そんな風に想像する。

なんでも緊縛が解決するなど、もちろん思っているわけではない。
でも緊美研は、寄る辺なく漂いつづける、夜光虫が放つ光のような
自信がなく弱々しく、そして無自覚に愛を渇望する魂をそっと抱きしめたいと、
いつでもドアを開けて迎える準備がある、そんな場所でありたいと願っている。


【緊美研作品セール】続行中でございます
◆9月11日(月)から9月末日23時59分まで
◆1800円の品は1000円
◆それ以外の品は全品半額
にて販売いたします。

◆備考欄に必ず「ブログを見た」とお書きください。 

濡木痴夢男の緊縛を、できるだけ多くの方に知ってほしいと思っています。
ご注文・お問い合わせお待ちしています。

緊美研オンラインショップ

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[ 2017/09/15 02:42 ] 思うこと | TB(-) | CM(-)

死亡診断書とDVDのセール

昨日、九月九日は濡木痴夢男の命日だった。
これで丸四年が経ったわけだが、今年になってようやく、
せんちゃんの不在を受け容れなければならない出来事があった。

ある人から、死亡診断書を見せていただいたのだ。
「これで信じられる?」
と心配そうにわたしの顔を覗き込むその人に、
「信じられないというのとは、少し違うんです。なんというか……」

そう、なんというか、生身の人間としてのせんちゃんが死んだ、
というのは解っているのだ。それは充分理解していた。
わたしがぐずぐずとくすぶっていたのは、
やはりその死体を見なかったせいだと思う。
本人の字で書かれた死亡通知のハガキが届いても、
多くの人が話題にしていても、
みんなを騙して、せんちゃんはどこかでほくそ笑んでいると、
そんなふうにぼんやりと思っていた。

でも、死因や医師の所見などが汚い字で書き込まれた用紙を見ていたら、
その事実だけが、じわじわと身体にしみ込んでくるのを感じた。
もしもひどい最期だったなら、そんな事実は知りたくない。
せんちゃんはせんちゃんらしく、濡木痴夢男として死んでいってほしい。

名前も年齢も、立場も仕事も、外側の一切を取り払ったそのままのせんちゃんは、
一体どこへ行ったのだろう。
わたしはきっと、これからもそんなせんちゃんを探しながら生きてゆくのだと、
お腹の底の方から温かい力が沸いてくるのを感じながら思った。



【緊美研DVD・セールのお知らせ】
よく初めて会う人から、
「若い頃は緊美研ビデオが高くて買えなかった」
というお話をされる。
緊美研ビデオが初めて出来たのは、バブルの頃だったので、
どこのメーカーのビデオも高かった。
でも、緊美研ビデオはたった30分の作品で1万円もした。
「例会ではもっと長く撮影してるんだから、そんなに短くしたらもったいない」
というと、
「そんなに長くしたって、どうせみんな見ないよ」
とせんちゃんは言ったのだ。
しかも、二人のモデルを15分ずつ出しての30分。
どちらかのモデルが好みじゃない場合は、
「いらない女に5千円も使わなくちゃならないのに」
と、わたしは反対した。
この編集は、歌舞伎の一幕見を意識し、
緊美研例会の中で盛り上がったシーンや、
縛り・責めが厳しいシーンを選んで見てもらおうということだった。

そんな説明はどうでもいいか……。
「若い頃は高くて買えなかった」人や
「今まで緊美研ビデオを見たことがない」人たちに
ぜひ見て頂きたいと思い、セールを行います。

◆9月11日(月)から9月末日23時59分まで
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[ 2017/09/10 21:39 ] 濡木痴夢男 | TB(-) | CM(-)

あの日、目に焼き付けたきみは、いまも笑っているだろうか

緊美研例会で、縛られる前のモデルを撮るのが好きだった。
家を出たその服装のままで、スタジオの薄暗い隅に立たせて会話をしながら。
ここに参加しようと思うまでに、どんな生を生きてきたのか、
家で支度をしながら、鏡に写る自分を見つめて何を思ったか。
濡木痴夢男の縄で縛られて、どんなことを感じたいか。

いまの自分は、もうじきいなくなるよ。
濡木の縄を知ってしまったら、それ以前の自分にはもう戻れない。
覚悟はいい? 
怖くはないの?
そんなことを話しながら、彼女たちの「最後の表情」をフィルムに閉じ込める。
(あの頃はまだ、フィルムカメラを使っていた。会員たちはみなデジタルに移行していたけれど)
緊美研39
会員たちの話し声があちこちからぼそぼそと聞こえ、
濡木が麻縄やその他の責め道具をバッグから出す気配を感じ、
他のモデルのさまざまな感情が複雑に混じり合った視線を受け止め、
彼女たちはわたしにそっと微笑んでくれた。


緊美研のモデルは、一般女性も多かった。
まだインターネットが普及していなかった頃、パソコン通信の中に「緊美研」は存在した。
そこで初めて麻縄緊縛に興味を持った女性たちが、例会に参加することもあった。
そんな人たちに対して、会員たちはとても気を遣い、
緊美研の素晴らしさを理解してもらうことに一生懸命だった。
緊美研24
縄に興味を持ってもらうこと、縄を好きになってもらうことは、
会員たちにとって「自分を肯定し、受け容れてもらうこと」と同じだったのかも知れない。
男性の身体を持った会員たちであるが、緊美研例会において、
彼らの心は男でもあり女でもあり、あるいはどちらでもない「縄好き」として、
同じ嗜好を持つ者と認め合いたかったのかも知れない。

現在さまざまな映像作品に出演する、人気のモデルや女優たちは、
誰かが強烈に魅せられた「ある作品」の中の「彼女」なだけではなく、
別の作品では当然別の女を演じるわけで、
それを知りたくないと思っている誰かの目に触れる機会もあるだろう。
つねに輝いてる彼女たちを追い続けるのは、
それはそれで辛く苦しいこともあるのではないかと思う。
緊美研36
緊美研に出演したモデルの中には、職業モデルではない一般女性も多く存在した。
何度も続けて参加した人もいれば、一年に一度来る人もいたし、
たった一度だけで、そのあとは連絡をとれなくなった人もいる。

もうすでに亡くなっている人もひとりではない。
写真やビデオの中で、笑ったりはにかんだり泣いたりしている彼女たちは、
いまどうしているだろう。
濡木痴夢男の縄に酔い、閉じた瞼の下で眼球をゆるゆると動かしながら、
あぁ、きもちいい……
と甘い吐息とともに洩らした彼女たちは、今も元気でいるだろうか。


緊美研の初期に何度も登場し、その後しばらく行方がわからなくなったモデルがいた。
男性問題で苦しんでいたらしいのだが、
それを聞いて濡木痴夢男は言った。
「他人から見てどんなに酷い男でも、それで本人が幸せなら仕方ない」
その人の幸せはその人にしかわからない。
傍から見てどんなに不幸でも、彼女がそれがいいと言うなら見守るしかないのだ。

彼女がその男と別れあと、濡木とともに会いに行った。
「待っててくれてありがとう。放っておいてくれてありがとう」
そう言って彼女は泣いて、わたしもその隣で泣いた。
向かいの席で、濡木はにこにこしていた。
撮影6
大勢のモデルたちを懐かしんでみる。
たくさん話をした人も、ほとんど目線を合わせてもくれなかった人も、
濡木痴夢男の縄に縛られた女性たちはみんな、
願わくは幸せでいて欲しい。
通俗的な幸せでなくてもいいから。
その人だけにしかわからないカタチでもいいから。
そして、時には濡木の縄を思い出して欲しい。
あの日、あなたたちの身体と心を何よりも強く、愛情を持って抱きしめてくれた縄は確かに存在したんだよ。

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[ 2017/09/02 04:17 ] モデルのこと | TB(-) | CM(-)

緊美研オンラインショップよりセールのお知らせ

緊美研オンラインショップです

◆8/20まで:1800円のDVD→1000円セール開催のお知らせ
いつもご利用くださいまして、ありがとうございます。
8/18~8/20の3日間、「廃盤一部タイトル特価」「オンラインショップ 1800円のDVD→1000円セール」を開催中です。

期間限定セールのカテゴリをご覧ください。
・「緊縛浪漫」「緊縛イズム」などのタイトルは8400円→2880円に値下げ済みです。
・1800円のDVDは、ショップ上の金額はそのままです。返信メールにて正しい金額をご確認ください。
・点数制限はありません。
・全てのお支払い方法でご利用頂けます。
・ご注文から24時間以内に、正しい合計金額を記載した返信メールを送信致します。


お支払い方法や発送などについての詳細はこちらの お知らせ をご覧のうえ、ご注文ください。


明日(20日)までのセールです。
まだ「濡木痴夢男の緊美研ビデオ」をご覧になったことのない方も、
この機会にぜひご利用くださいませ。
お待ちしております。

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[ 2017/08/19 05:59 ] お知らせ | TB(-) | CM(-)

マニアから学ぶこと・4 涼子さんと佳行さん

前回はこちら

小さなカメラは佳行さんの邪魔をせずに、吐息でレンズが曇るほど涼子さんに近づくことが出来る。
淡い珊瑚色の口紅をつけた涼子さんの唇が、縄の動きに合わせてゆるく閉じたり開いたりしていた。
そこから洩れる小さな喘ぎ声は、佳行さんの耳に届いているのだろうか。

はぁ、あぁ……。
はぁ、あぁ……。

と繰り返される切なげな吐息と声。
それをそばでずっと聞いているうちに、わたしも涼子さんのタイミングに合わせて呼吸していた。
繰り返される甘い喘ぎと苦痛を表す呼吸は、平常時のそれよりもずっと速く、
浅く短い呼吸を続けていたわたしの脳は酸欠になり、
頭がクラクラしてきたと思っているうちに、指先の痺れも自覚する。
このままでは、まずい。
撮影者が、責められる女性と一緒に縄酔い状態になってしまうなんてシャレにならない。
わたしは一旦お二人から離れ、全身が収まる位置まで畳の上を後ずさった。

離れて見る涼子さんと佳行さんは、背景の襖絵からくっきりと浮かび上がり、
とても美しかった。
北斎の富嶽三十六景に似た、力強い波頭が描かれた襖だ。
碧瑠璃いろの大きな波から、真珠のような乳白色の飛沫が散っている。
その前で、涼子さんは薄いローズピンクのスカートを丸く広げ、
ツルツルしたたっぷりの生地に、太腿を舐められる感触を味わってるようだ。
括られた足首だけが、スカートの裾から覗いている。
両足を小さくまとめるようにくっつけ、足指はすべて内側に強く曲げられていた。
ウエストにかかる縄が、梁から下がった麻縄の輪に結び付けられると、
むっちりした白い身体の中心が、畳から浮いてゆく。
涼子さんは足指を反らしたり曲げたりしながら、首をのけ反らせた。
白い首。
汗でそこに張り付いた、数本の髪。
はだけたブラウスからのぞくベージュのブラは、豪華なレースが眩しいほどだ。
鎖骨の窪みに、うっすらと滲んだ汗が留まっている。

佳行さんは胸縄をぐいっと掴むと、それを一つにまとめて縄尻を梁にかける。
そしてスカートに包まれた右脚を持ち上げ、膝を縛ってそれも吊り上げた。
涼子さんは辛そうに眉を寄せ、畳の上に残された左足の爪先で鮮やかなヘリを掻く。
頭が少し下がったことで、白い頬が急にばら色に染まってゆく。
自身の顔が熱くなったことを自覚すると、涼子さんは急に恥ずかしそうに身体を縮めた。

「いや、見ないで。こんな顔を、見ないでちょうだい……」

振り絞るように言う声を、佳行さんの意地悪な言葉がさえぎった。

「見られたいのはわかってるんだ。ほれ、ちゃんと顔をカメラの方に向けてみろ」

濡木痴夢男とそっくりの、やや芝居がかった言い方だった。
そうか。
さっきから微妙な既視感 に背中がゾクゾクしていたが、そういうことか。
涼子さんと佳行さんを見ていると、「緊美研ビデオ」を見ているような錯覚がある。
ご夫婦で二百本近くもの緊美研ビデオを見ているのだから、当然と言えば当然かもしれない。
それぞれが描く理想の「縛る男」と「縛られる女」。
たくさんの緊美研ビデオを見て、その中に入りたい、その世界に浸りたいと、
何十年も切実に思ってこられたお二人が、いま緊美研の世界を再現しているのだ。

わたしは胸が熱くなるのを感じ、それから頬を伝った涙が顎から零れ、
ぽたりと微かな音をたてて畳に落ちるのを見ていた。
美しい畳を汚してごめんなさい、と思いながら、
(せんちゃん、こんな素敵なマニアの人と出会えたよ。
緊美研をやってきて、本当によかったね)
と、いまはもういない人に心の中で話しかけた。

細く開けた障子の隙間から、初夏の香りが漂ってくる。
お庭の緑がまばゆく、紫陽花の濃いブルゥが切なかった。


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[ 2017/08/01 20:53 ] 緊縛美研究会 | TB(-) | CM(-)

マニアから学ぶこと・3 涼子さんの反応

前回はこちら……でも直結ではありません。

麻縄を持ったわたしが背後に立つと、涼子さんは「はぁ」と悲しげに息を吐いた。
小さな手をきつく握りしめている。
何も塗られていない爪は、きれいなピンク色だった。
まあるい肩が、ゆっくりと上下する。
白い首筋は、その肩に埋まってしまうほど緊張に縮こまっていた。

「いきます」と口の中でつぶやいて、涼子さんの手首をとる。
「うっ」と「あっ」の中間くらいの声が洩れ、涼子さんの身体はますます強張った。
右手を下にして重ねた左右の手首を支え、その下に麻縄をくぐらせる。
両手首に2回巻きつけて、きゅっと結んだ。
縄尻を引き上げて高く持ち、そのまま涼子さんの顔を覗きこむと、
いやいやをしながら俯いて、唇を噛んでいた。
(かわいい! 可愛い!)とゾクゾクしながら佳行さんを見ると、
もう少し縛ってやってください、と目で合図される。
コクリと肯いて涼子さんの肩に手をおきながら、左腕から胸の前へと縄を回した。
手首に戻って固定するときに少し力を入れて締めると、
涼子さんは上体を前に倒して首を左右に振る。
(きついですかね)と目で問うと、
すぐそばで腕組みしながら見つめていた佳行さんは
そんなことはありません。まだまだいけます。
と自信ありげに鼻の穴を膨らませた。

201707-03.jpg

でも、わたしが縛るのは最初の一本だけという約束だし、
何よりも、わたしが縛っていたのではビデオを撮ることができない。
涼子さんの両肩を手のひらで包んで、後ろから耳元に囁く。
「では、離れますね。あとはご主人にお任せします」
恥ずかしそうに肯いて、涼子さんはぎゅっと目を閉じた。

黒いバッグから麻縄を取り出し、佳行さんが涼子さんの正面に立つ。
一本の縄で縛られただけなのに、もう涼子さんは動けなくなっている。
身体を小刻みに揺らし、唇を噛みしめ、瞳を忙しなく動かしながら目の前の夫を見つめている。
時間にしたら、十数秒程度のことだったと思う。
だが、このふたりの間に漂うヒリヒリと痛いような空気は、
広い室内から酸素を奪いつくしたように、わたしを息苦しくさせた。

小さなビデオカメラを持つ手のひらが、少し汗ばむ。
まだ始まってもいないのに、こんなんで大丈夫か!? と思いながらも、
初めて目の当たりにする「マニア夫妻の緊縛交歓」に、心躍るというよりも
もう期待と興奮で目の前が真っ赤に染まるほど、わたし自身もハイテンションだった。

201707-04.jpg

愛用の縄は、濡木のよりも少し太いようだ。
充分に使いこまれているらしいそれは、麻縄なのに表面が滑らかで、
ヒトアブラ(涼子さんひとりだけなのか?)によるものだろう光沢がやさしげだ。
そのつややかな麻縄が、わたしが使った濡木の縄に結わいつけられ、
生命を宿したように呼吸し始める。
胸の下に二巻きし、後ろで留める。
わたしは佳行さんの手を追いながら、涼子さんの表情にも迫った。
「おっとりとやさしい女性」という印象の涼子さんは、
その反応もやわらかでやさしい。
激しく身を捩って悶えたり、大きな声で泣いたりということは、
きっとしないタイプなのだろう。
時折ため息を洩らしながら、きゅっとあげた肩に頬を擦りつけるようにして恥じらい、
目を閉じて縄を味わっている。
佳行さんの手が肌に直接触れるたび、小さくヒッと息を吸い込む。

もう何十年も、こうして二人きりで緊縛を楽しんできたのだ。
それなのに涼子さんの反応は初々しく、可愛らしい。
その顔も、全身の表情も、本当に可愛らしいのだ。
お二人の間に流れる、やさしくも濃密な空気はいままであまり触れることのなかったもので、
一般の、素人の、「愛ゆえの緊縛」のマニアックな光景に、
自分が溶けて混じってしまいそうな錯覚をおぼえた。

ただ目の前のふたりを撮る。
わたしの撮りたいように撮る。
こんな機会を与えていただいたことに感謝しながらも、
わたしはただただ夢中だった。


※写真は枷井克哉氏の作品。
 女体を棒で突くのが好きな濡木痴夢男。
 二枚目は枷井さんの好きな腹部への責め。

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[ 2017/07/21 12:15 ] 緊縛美研究会 | TB(-) | CM(-)

マニアから学ぶこと・2

前回からのつづき

それまではチラチラとこちら(ベランダ)を見ていたくせに、
いざ縛ろうとなると、こんなにいきなり……。

できれば濡木が立ち上がる瞬間からビデオに収めたかった。
彼女のどんな仕草に触発されたのか知りたかった。
連れの男性を見る視線だったのか、ふと俯いたときの顎のラインだったのか、
それとも、はらりと一本抜け落ちた黒髪がスカートの上を転がるのを見たときなのか。
いや、もしかしたらそのどれでもなく、男性から電話を受ける前に話していた
美味しい焼きそばを、早く食べたいと思ったからなのかもしれない。
せんちゃんは、食いしん坊なのだ。

201707-1.jpg

今までに、パートナーである男性から何度も縛られていたらしい。
前開きのブラウス、後ろにファスナーがついたフレアスカート。
縛りながら少しずつ乱してゆくのに、ぴったりな服装をしている。
腕と胸をぎっちりと縛られた彼女は、じっと男性の方を見ている。
背後の濡木を振り返ったのは、最初の一度だけだった。
「彼女には話していない」のではなかったか。
驚きも怖がりもせず、麻縄に拘束される自分の身体を男性の方に向け、
胸を突き出すように背中を少し反らす様子は、
こういったハプニングに見せかけた緊縛・SMが彼女にとっては
特別なことではないように思えた。

「どう? 彼女。いつもやられてる縄と違うだろう」
男性の方を向いて、少し得意そうに言う濡木。
彼の表情が変わるのを面白がっているのだ。
でも、残念なことにベランダから男性の顔は見えない。
きっと、いつもこんなことをしているのだろう。
ふたりのSMプレイでは満足できず、誰かに見られることや、
彼女が他の男に縛られるのを楽しむようなカップルなのだ、と
わたしは勝手にそう思い、寒いベランダでコソコソと撮っている自分に
ムカムカしてきた。

彼女のブラウスのボウタイを、濡木がしゅるっとほどく。
白くふっくらとしたデコルテには、黒っぽい筋状の痣のような物が見える。
カメラを三脚から外し、ハンディに切り替えてガラスに近寄ってみる。
あぁ、もどかしい。
どうせ撮影されることだって知っている筈だ。
そう思い、そっと外からサッシを開ける。
ゆっくり、静かにそろそろと。
冷たい空気が室内に流れ込み、彼女はきゅっと肩をすぼめながらこちらを見た。
目が合った時のその顔には、満足気な(今で言う)ドヤ顔が張り付き、
わたしと彼女は一瞬で何かを共有したと確信した。

201707-02.jpg

ドヤ顔にドヤ顔で応え、わたしは彼女に近寄っていった。
レンズがその肌に触れるほど近づき、唇から洩れる息で画面が曇る。
濡木に目で合図しながら下がる。
ボウタイの下のボタンをひとつ、ふたつと外していくと、
むっちりとした身体が露わになってきた。
うっかり指を這わせたら、吸い付いてしまいそうな肌。

濡木が黒いブラジャーからぷるぷるの乳房をつかみ出す。
片方だけ零れた乳房の上に縄を押し付け、麻紐で乳首の根元を縛った。
苦痛の呻き声を漏らしながら、彼女は上半身を彼の方へ捩る。
差し出された乳房を、両手で強く握り潰すように揉む彼。
熟した桃だったら、とっくに果汁が溢れて滴っていただろう。
皮膚が破れてしまうのではないかと心配になるほど、
その揉み方は激しかった。
彼女は歯を食いしばるようにして身体を揺らしていたが、
急に大きな声で悶えはじめた。
あまりにも大きいその声に、濡木が慌てて布を口に詰め込む。
喉の奥まで届くほど大量の布を詰められ、彼女は息が苦しそうだ。
さらに手拭いを二重に巻きつけ、その上から麻縄をかけた。
「う゛う゛~」
とくぐもった低い声で呻きながらも、彼女は自分から床に横たわると、
フレアスカートの脚をそろそろと開いていった。


「や、私は何を書いているのだ」
これは、以前の「緊縛ナイショ話」でせんちゃんがよく書いていたこと。
すぐに書いていることが横道に逸れてしまっていた。
わたしは、「こんなに詳しく書くつもりじゃなかった」
いつもそうなのだ。
さらっと書いてどんどん進めるつもりが、詳しく再現したくなってしまう。
これも、「マニアから学んだこと」のひとつだ。

つづきはまた次回に。

※写真はどちらも枷井克哉氏の作品。
 サングラスをしたせんちゃんは、ちょっとキモチワルイ(笑)

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[ 2017/07/19 01:31 ] 緊縛美研究会 | TB(-) | CM(-)

マニアから学ぶこと・1

せんちゃん(濡木痴夢男)と毎月緊美研の例会を行っていた当時、
ことあるごとに「マニア」「マニア」とせんちゃんが口にするのが鬱陶しかった。

濡木の言う「マニア」とは、もちろん「緊縛マニア」のことで、
本当にマニアと呼べるほどでもなく、
「ちょっと縄に興味があります」
「一度縛られてみたかったです」
その程度の若い女性のことも、濡木はマニアと呼んだ。

一般女性が会員と一緒に、あるいは濡木が大手ビデオメーカーの現場で見初めた
AV女優などが見学のつもりで例会に参加すると、
「ちょっとここへ来てごらんなさい」
と、麻縄を扱きながらニコニコと言う濡木に導かれ、
床と平行に天井から吊り下げられた竹棒の下に立たされる。
そしてライトが向けられ、気づいた時には高手小手に縛られている。
そんなことが毎月のように起こった。

彼女たちはたいてい、知らないうちに拘束されたことに驚き、
手首に巻き付いた麻縄の感触のやさしさに驚く。
「もっと痛いのかと思ってました」
「綿ならいいけど、麻縄はチクチクしそうで嫌でしたが、
こんなに柔らかいなんて」
濡木の縄は、ふわりと舞い降りるように手首に絡み、
そのまま二の腕、胸と身体に巻かれてゆく縄を
ぼんやりと見おろしていられるほど、初めて来た女性にやさしい。
まずは、麻縄を知ってもらうこと。
麻縄を好きになってもらうこと。
そこからはじまるのだ。

濡木は、彼女たちを注意深く観察しながら縄を足し、
出来そうな人は、次第に厳しいポーズに固縛してゆく。
もう彼女たちの口からは、照れ笑いも何も出ない。
切なそうな溜め息と、時々喘ぎ声を漏らしながら
縄に身を任せるばかりになる。
そして、解かれる頃にはすっかり麻縄の虜になり、
「ほどかれたくない」
と小さな声で洩らすのだ。

そんな女性たちをたくさん見てきたが、
当然、まったく縄に興味がなく、縛られることに不安を持つ女性もいた。

「一人で緊美研に行って、濡木先生に縛られてこい。
その恥ずかしい姿をビデオに撮ってもらうんだ」
ご主人にそう言われ、本当に一人だけで新幹線に乗って来た、桜井礼子さん。
礼子さんは、例会の中で濡木に縛られ、言葉による辱めを受けながら、
涙を流していた。
それは不快感情からではなく、とても充足した幸福な涙だったという。

「妻(あるいは恋人・愛人)を縛って責めたビデオを作って欲しい」
という要望もたくさん寄せられたが、それは緊美研の趣旨と違うため、
いつもお断りしていた。
しかしある時、強引な一人が新宿の緊美研事務所に
女性を伴ってやってきた。

愛人であるというその女性には、縛ることは一切話していない。
事務所で濡木やスタッフと会話しているうちに、
女性は必ずその気になるから、是非お願いしたいと。
電話を受けた30分後に到着するというので、急いで準備をした。
狭い事務所だった。
壁には商品である(当時)ビデオテープを収めた什器がびっしり並び、
反対側には机やFAX台などが設置してある。
中央のテーブルを囲んで座り、そのまま流れで縛り始めることになっていた。
カメラを出したりセッティングしたりでは、
せっかくその気になった女性の気が削がれてしまうと、
予めベランダにビデオカメラを設置した。
ガラス越しの撮影になる。
サッシ窓の下半分はすりガラスなので、できるだけ立ちポーズで。
もしも床に倒れてしまったら、三脚からカメラを外してハンディで撮り、
女性が前後不覚になるほど縄酔いしたら、そっと室内に入って撮ればいい。
そんな段取りだった。
もちろん撮るのはわたしだが、その前に来客を迎え、お茶を出さなければならない。
どうしようかと悩んだが、隣の部屋からベランダに出て、
エアコンの室外機を跨いでカメラにたどり着くことにした。
寒い時期だった。
コートを出す余裕がなかったため、
事務所にいるままの薄着で7階のベランダに出るのは辛かったが、
「いい画」を撮るためなら、寒さなどすぐに気にならなくなる。
奥行のない狭いベランダで、ひとり待機すること30分。
男たちが三人がかりでなだめすかし、女性は女王気取りで笑っている。
ベランダからガラス越しの撮影。
もちろんカーテンは閉められており、細い隙間からこっそりと撮るのだ。
濡木がチラチラとこちらを見る。
バレちゃうからやめてぇ~、と思いながらかじかんだ指を録画ボタンの上に置く。
痺れを切らした濡木がいきなり立ち上がり、女性の背後に回った。
「あっ、ちょっと……」
そんな言葉が彼女の口から洩れる。(よく聞こえなかったけど)
「そんな気はなかった」割に、彼女は協力的に身をよじって縄を受けた。
とても積極的に見えた。

長くなってしまった。
続きは次回に。

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[ 2017/07/16 21:50 ] 緊縛美研究会 | TB(-) | CM(-)

いやらしい脳

「ハダカにならないの!? それの何が面白いのさ」
「アソコ見せないの!? それでどこが面白いの」

緊美研のことを外部の人に話したとき、
驚いたようにこう訊ねられることが何度もあった。
緊美研例会では、着衣での緊縛が確かに多かったが、
わたしがモデルとして参加し始めた頃は、
「衣装ナシ。初めから全裸」
と言われることがほとんどで、
当時毎月のように借りていたスタジオの隅で全裸になり、
「ギター持って『バカヤロー』って感じでステージに出てく」
と言っていた蘭丸のように、タオル地のビーサンだけを履き、
十数人の会員たちがカメラを構える前に出て行った。

それでも、彼らはいわゆる通俗的・性的な目でわたしを見るのではなく、
「大勢の男の前で、全裸でさらし者にされる憐れな女」であるわたしに、
やさしい光のような眼差しを向けてくれる人ばかりだった。
だからと言って、緊美研は劣情を催すことを禁止しているのかと
訊ねられれば決してそんなことはなく、
会員ひとりひとりの脳内では、
厳しく縛られて責められ、売られてゆく女や、
監禁されて凌辱される女、
家畜のように扱われる女、
人間ではなく性具としてモノのように虐げられる女や、
あるいは子供の頃に大切にしていた人形の代わりに
あらゆる世話をされ、可愛がられる女や、
母親のように甘える対象として拘束される女などなど……
妄想は際限なく拡がり、目の前で縛られてゆくわたしを通して、
それぞれの理想の光景を頭に描いていたのだと思う。


「全裸」だったと言っても、もちろん脚を広げたポーズに縛られることはない。
「自然に」と言ってもいいような、ごくごく「自然」な流れで、
濡木痴夢男の縄はわたしを捕らえ、緊縛した。
目まぐるしく変化するポーズの中で、陰毛や粘膜が見えてしまうことも当然あった。
しかし、そこを見せることが目的なのではなく、
偶然に・瞬間的に見えてしまったそれに対し、
その場にいた誰もが息を呑む。
「見てしまった」後ろめたさと、
薄暗い「得した感」で胸を満たしながら。
「見られてしまった」女への罪悪感は、
思わず「ラッキー!」と思った自分に、
お前は卑しい奴だと突きつけ、虫唾の走る思いをさせる。
それぞれの頭の中ではいくつもの感情がぶつかり合い、複雑に絡み合い、
一瞬ごとに明滅しながら、永遠に、決して混じり合わない物質として回り続ける。
その、目に見えない「想い」に身も心も委ねてしまおうと決めた時、
彼らの脳は、強烈な射精感のような快感に襲われていたのかもしれない。
強烈なのに静かな、静かで深い、底なしの淵へ沈んでゆくような感覚だったのではないかと、
あの頃の暗いスタジオを思い出す。
きっと、だから一度参加すると抜けられなくなってしまうのだ。
緊美研は、当時のマニアにとってもっとも中毒性の高い、危険な場所だったのだ。

「通俗的なエロを一切排除」
と濡木痴夢男は豪語していたが、
充分に通俗的な場面もあった。
セーラー服の似合う、少女のようなモデルをM字開脚に縛り、
ショーツの上からバイブレータを当て、染みが広がる様子を執拗に撮ったり、
連縛したモデルを絡ませたり。
でも、それは「見る者」によって通俗的ではなくなっていたのだと思う。

「アダルトビデオではないけど、エロビデオです」
緊美研ビデオをこう言って説明したことが何度かある。
緊美研ビデオは、AVと表現していいような要素をまったく満たしていない。
でも、「見る者」によっては最高に「エロい」ビデオなのだ。
それは、ソフトに記録されている映像自体がそうだということではなく、
見た者の脳内で、どのように広がるかの問題だと思う。
エロい映像を期待して見た人には、つまらないものかもしれない。
だから、ビデオの発売を始めた当時のジャケットに、濡木痴夢男はこう記していた。

「女のハダカが見たい人は、決して買わないでください。
そういう人には、面白くもなんともありませんから」

「女のハダカ」などネットでいくらでも見られる今、そういった画像を見て、
当時の会員たちのような「静かで深い」快楽を得られている人は
どれくらいいるのだろう。
ドキドキしたりくらくらしたり、焦ったり安堵したり、
縛られる女を目の前に、頭がパンクしそうだと恐怖し、
手のひらをべったり濡らす汗でカメラを取り落としそうになりながら、
それでも、憧憬と愛情と、劣情と残酷さと……。
そんないやらしい脳を持っている人は、まだいるのだろうか。

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[ 2017/06/05 16:30 ] 緊美研 | TB(-) | CM(-)
プロフィール
春原 悠理 Youri Sunohara Facebook
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濡木痴夢男の緊縛美研究会の主宰です。
好きなもの:ねこ、チョコレート、雑多な読書、映画鑑賞

便利なものは苦手です。
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