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人骨はコーヒー豆よりも硬いか!?

以前、スターバックスのグラインダーでコーヒー豆を粉にしていた頃。
海に散骨するために、弟と母と先代の猫の骨を細かくする必要があった。
乳鉢ですったりして、ほんの少しは粉末にできたのだけれど、
これがかなりの重労働で、時間もものすごくかかるし、手首を傷めるしで、
散骨用の粉末にしてくれる業者に頼もうか、という話にまでなった。
でも、他人の骨と取り違えられたらたまったものじゃないし、
万一他人の骨を渡されても、家族のものだと確認する術もない。
じゃあ・・・というアレで、コーヒー豆のグラインダーで粉砕してみようということになった。

早速、スタバで新しいグラインダーを購入。
50g程度を挽くことが出来る、小さいものだ。
死んだ順に、まずは弟の骨から。
心を込めて、骨に話しかけながら手作業で粉にした時よりも、
マシンで轟音とともに砕かれる骨は、ちょっと可哀相だったし、
また罰当たりなようで、なかなか実行に移せなかったが、
散骨の日程は迫ってきている。
もうクルーザーの予約もしてあった。
時間がないのだ、と
テーブルの上にグラインダーを載せ、
小さなお骨を一本入れた。
スイッチを入れると、ギュィィンという音とともに、
お骨は粉末になるはずだった。そう信じていた。
なのに、
一秒もたたないうちにバキッと音がして、
見るとお豆を粉砕するはずの刃が割れていた。
!!
そうか、そうだよね。
だってコーヒー豆は歯で噛み砕くことができるもんね。
骨の方が、うんと硬いに決まってるよね。

そして、手首が痛いままでは満足に力を込めることもできず、
かなり大きい骨片が混ざったままの人骨を
海に撒いたのでした。

とくに母のお骨は、母のきょうだいたちもみんな細かくしたいと言ってくれたので、
遠方に住んでいる人には段ボールにいれて「宅急便」で送った。
『品名欄』にはさすがに『人骨』と書くわけにはいかなかったので、
なんて書いたんだっけ。
「ガラス」とか「食器」とか、そんな内容にしたっけな。

いや、なぜ急にそんなことを思い出したのかと言えば、
弟が失踪した2001年母の日。
それは、今年と同じ13日だったんだよなぁ、と
しみじみしてしまったからだ。
なにもねぇ、母の日にいなくならなくたって良さそうなもんだろ。
死んだのは、それから一週間後の20日……らしい。
らしいというのは、検死した医師がそう言ったからだ。
寒冷地だったので、死後5日で発見されたけど、死体は綺麗なままだった。
凍死の特徴であるという、皮膚がきれいな桜色に変色していた。

でもね、練炭で死んだ遺体も、皮膚がピンクに染まるらしい。
最近そのことを知って、またわからなくなった。
当時、殺されたんじゃないかって疑ってた人がいたけど、
その可能性もゼロじゃないわけだな。

もう一度、会いたいな。
弟にもママにも。
会って大好きだって言いたい。
もっとやさしくしたい。
こうして、ずっと負い目を感じながら生きてゆくのは苦しいよ。





******************************
【緊縛美研究会再開します!】

6月24日日曜日、緊縛美研究会を開催することになりました。
緊美研にモデルとして参加してくれたこともあり、
ミストレスとして活躍されている
小室芹奈さんを縛り係に迎え、
濡木痴夢男の想いを引き継ぎます。
麻縄に特別な愛着を持ち、
緊縛美を愛する緊縛マニアのための撮影会を実施いたします。
時間・スタジオ・参加費等の詳細は、決まり次第お知らせいたします。

縛られたモデルを薄暗いスタジオの隅から見つめ、
涙を流していた会員たちの姿が忘れられません。
縄で縛られた女性を通し、参加者があらゆる感情を解放できる場所にしたいと、
芹奈さんと相談しています。
緊縛マニアのみなさま、続報をお待ちくださいませ。
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[ 2018/05/14 02:56 ] 思うこと | TB(-) | CM(-)

【職業】縄師(緊縛師)

確定申告に必要な領収書などの整理をしながら、
ふと緊美研の頃のことを思い出した。

例会の中でご自身のアナログレコードやCDをBGMとして提供したり、
切腹ビデオでは音響効果を担当してくださった、MERZBOWの秋田昌美さん。
寡黙で美しく、現場ではいつも色々なお手伝いをしてくれた秋田さんだが、
彼のライヴに行ったり、直接会ったことのある人ではないと中々「あの感じ」を
想像してはもらえないかもしれない。
とにかく物静かで、たたずまいが美しいのだ。
何年も例会に参加して、何十回と同じときを過ごした会員でも、
秋田さんと会話をしたことのある人は少なかったかもしれない。
静かでちょっと近寄り難い雰囲気を持つ秋田さんが
「ネットで確定申告をしました」
と言った時は、なぜかわからないがとても驚いた。
「秋田さんにそんなこと似合わない」
と思ったのも事実だが、正しくは
「そんなこと、してほしくない」
と思ったのだ。
どうしてそう思ったのか、ずっとわからない。

そして、せんちゃん(濡木痴夢男)の確定申告。
また、せんちゃんふざけてばっかりだ……。
と、思い出すたびに税務署の人が気の毒になってしまう、
そんな話。

その前年までは【職業】の欄に『文筆業』と記入していたらしい。
それが、何を思ったのか
「悠理、俺ことし確定申告になんて書いたと思う?」
とニヤニヤと嬉しそうに訊くので、なんとなくイヤな予感はしたのだが、
「う~ん、なに? 文筆業じゃなくて?」
と面倒だけど訊いてあげると、
「それが、『縄師(緊縛師)』って書いてみたんだよ。
税務署の奴がなんて言うか知りたくてさ」
とドヤ顔で言うのだ。
聞いたとたん、
あぁ……と思った。
税務署の窓口で、カウンターを挟んだ向かいに嫌いな役人がいて、
なんとかこいつにいやな思いをさせてやろうと出かけたせんちゃん。
担当した人が、本当に気の毒だと思っていると、
「縄師って書いて行ったら、そいつがね、
『これは具体的にはどういうことをするんですか?』
って聞きやがるからさ、俺あったまきちゃってさ」
と言いながらすごく楽しそうだよ。
「うんうん、そうしたら?」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
窓口で、大きい声で言ってやったんだよ。
『あなた、女を縛ったことあります?
えっ? ない? そうだろうねぇ。
女を縛るなんて、そんな酷いこと誰にでも出来るものじゃないですよ。
縄師というのはですね、まず麻縄を用意します。
それで女をつかまえて裸にしてね、その女のマタを開かせてですね……』
って延々と続けてやろうと思ったんだけどさ、
『もういいです』
って泣きそうな顔してやんの。
はぁー、面白かった。悠理にも見せてやりたかったよ。
来年はマネージャとして一緒に行こう。
面白いぞぅ~。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


せんちゃんは、しょっちゅうこんなことをして緊縛とは無関係な人を
からかっていた。
初めから緊縛の世界に理解を示さないだろうと感じた人には、
とても意地悪をする。
それが子どもっぽい意地悪というか悪戯というか。
でもその洗礼を受けて、濡木痴夢男と緊美研に傾倒した人はたくさんいた。

「な、最初に怒られたり意地悪されたりしても
また来てくれる人はホンモノなんだよ」
と、よく嬉しそうに言っていた。

ここまで書いて、せんちゃんの他に
【職業】縄師あるいは緊縛師
と申告書に書く人は果たしているのだろうかと思う。
申告書にそう書いて、誰にでも通用するほどポピュラー(通俗的)な職業になったら、
それはすごくイヤだなぁ。。。

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[ 2018/02/25 12:07 ] 濡木痴夢男 | TB(-) | CM(-)

ぼくたちのアプリボワゼ

緊縛美研究会が発足した当時からの古い会員や、
緊美研例会に参加したことはなくても、ずっとビデオを観てくれていた人や、
モデルとして参加した女性、濡木痴夢男と何年も手紙のやり取りをしていた人など、
長いあいだ緊美研に心を寄せてくださっていた人たちには、
「僕の緊美研」
「私の緊美研」
というものがある。

「緊美研の縄はこうあってほしい」
「緊美研の縛りはこうでなければならない」

それぞれがみな緊縛美研究会という麻縄緊縛愛好家の会を
愛しているからこそ、いつまでも在りつづけてほしいと願うからこそ、
求める要素はおのずと密度を増す。

「常にマニアの期待に応え、いや、期待以上のものを作り上げなけれならない」
「だが、マニアに迎合してはダメなのだ」
「マニア以外の、ただ女のマタを見たいだけの奴を喜ばせるようなことはしない」
「通俗的なことをしてレベルを下げ、妥協することを自分に許したときに緊縛美は滅びる」

濡木痴夢男や古い会員たちと、何度も同じ話をした。
みな自分に言い聞かせるように真剣な面持ちで、
でも「濡木と緊縛美についての話を対等に語れる自分」
というものに少なからず酔っていたこともまた確かだと思う。

緊美研には理想があった。
志があった。
『黄金期』とよばれていた頃の緊美研には、
確かにそんな空気が満ちていた。
暗いスタジオで、モデリングランプのぼんやりした光の中に佇むモデルたちは、
生活や所属や立場、そして容貌までもが現実の彼女たちとは乖離した、
凄惨な被虐の美しさをまとい、厳しく戒められた身体をくねらせては、
魂を自由に遊ばせていた。

濡木痴夢男がいない今、わたしが緊美研をなくしたくないのは、
『あの頃』を愛してくれている人たちが、まだ存在しているからだ。
リアルタイムで参加、あるいは見聞きしていなくても、
当時の写真や映像に触れる機会はいくらでもあるだろう。
それらを見て何かを感じてくれるひとがいるなら、
わたしが緊美研を手放すことはない。

前田さん

遠くから見守ってくれる人がいる。
応援してくれる人がいる。
濡木痴夢男を懐かしんでくれる人がいる。

そんな人たちへの感謝と愛を込めて、
また新しく動き始めた。
失敗することはあって当たり前。
転んで打ちのめされたあと、
どう立ち上がるか。
何をつかんで立つのか。

せんちゃんを想うと、やっぱり負けられないのだ。
あの愛すべきクソジジイの笑顔を思い浮かべて、
わたしは何度でも立ち上がるしかないのだ。

けっこうキツイけどね……(笑)

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[ 2018/01/03 20:53 ] 緊縛美研究会 | TB(-) | CM(-)

大往生

醗酵バターは、焼き上がったお菓子を食べるときよりも
オーブンの中できつね色になりながらじわじわ膨らんでゆく、
まさに今が一番よい香りを漂わせているのだと思う。
深夜2時40分。
紅玉りんごのパイがショワショワと微かな音をたてている。
秋が深まる11月になると、無性に林檎のパイを焼きたくなる。
酸味が美味しい紅玉りんごをグラニュー糖とレモン汁で煮て、
仕上げに数種類のスパイスを振る。
キッチンには甘酸っぱくてキリッとした香りが満ちる。
わたしは酸味が強めなほうが好きなので、レモン汁はやや多めに。

あぁ、酸っぱい!

熱いうちに味見して、そう感じるくらいの酸っぱさが、
冷めて切り分ける頃にはちょうどよく馴染んでいる。

酸っぱい……
酸っぱい……

またせんちゃんのことを思い出してしまった。
せんちゃんは酸っぱいものが好きだった。
「山葡萄原液」という、山葡萄をそのまま搾ったようなジュースが好きで、
よくせんちゃんの自宅に送った。
山形県にあるそのジュース会社からは、せんちゃんが死んで何年も経った今でも、
お中元やお歳暮シーズンの御用聞きや、
都内のデパートの催事に出店するときにはDMが届く。
きっともう、わたしが山葡萄原液を注文することはないだろう。
デパートの地下で試飲販売をしていても、売り場に近づくことを躊躇ってしまう。
「俺、酸っぱいの好きなんだよ」
と言って、にこにこしながら葡萄液を飲んでいた。
いつの記憶だろう。
いつも突然あらわれるせんちゃんの姿は、笑っていることが多い。
不機嫌な顔だってたくさん見てきたのに、
どうしてか、口角をきれいに上げてにぃーっと笑う、
あの道化のような子どもっぽい笑顔が浮かぶのだ。

最近、緊美研に参加したことのある女性と話す機会があった。
彼女は、別の現場で濡木痴夢男と知り合い、
縄に興味を持って遊びにきたのだった。
例会で何度か縛られ、緊美研以外の場所でも濡木痴夢男の縄を受けていたらしい。
どんな関係だったのかは知らないし、特に興味もない。
だが、話が濡木痴夢男の死に及んだとき、
彼女は煙草をふかしながら言った。
「八十過ぎてたんでしょ? 大往生よね」

大往生という言葉を聞いて、何かが引っかかった。
「でもね、老衰じゃなかったんだよ」
というわたしに、
「だってもう八十過ぎれば充分じゃない。大往生ですよ」

ああ、この人は、単に長生きした人の死を「大往生」と思ってるんだな。
と、悲しくなった。
どんなに長く生きた人でも、その人の死を悲しむ人はいる。
その人の死を辛く感じる人もいる。
「充分長生きしたから、もう死んで当たりまえ」
そんな風に言われたような気がして、
遺族でもないのに、わたしは少なからず傷ついた。
何が悲しかったのかといえば、
せんちゃんには
「大往生でした」
と言いっていい遺族がいるのかいないのか。
思い出してくれる人は、悲しんでくれる人はいるのだろうか。
と、死んだあとまで勝手に心配している自分が滑稽だからかもしれない。

わたし自身は、自分が死んだら、その身体だけでなく、
わたしの持ち物からなにもかも、物理的なモノだけでなく、
人の記憶からもすっぱり消滅したいと思っている。
それが理想。
それがわたしの大往生。

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[ 2017/12/02 03:02 ] 濡木痴夢男 | TB(-) | CM(-)

写っていないものを映す

緊美研で、濡木痴夢男が女性を縛る姿をずっと撮ってきた。
わたしが撮る写真やビデオは、そのまま商品として編集されるものだったので、
個人的な好みよりも、「緊美研らしい映像」か、「観る人に伝わるか」等を意識する必要があった。
時々、好みのモデルが登場すると、およそDVDのジャケットには使えないような、
主観的でマニアックなカットにフィルムを大量に費やした。
それらはわたしの秘蔵コレクションとして、今も大切に保管してある。

わたしがモデルとして初めて参加したその数ヵ月後、
小さなカメラを持参してきた、初参加の佐藤まゆみちゃんに写真を撮られ、
翌月の例会時には出来上がったプリントをもらった。
年齢的には大人だったけれど、まゆみちゃんはお下げ髪のよく似合う少女だった。
その少女のようなまゆみちゃんが撮影した写真は、
他の会員たちのどんな写真とも似ていなかった。

まゆみちゃんの目には、わたしはこんな風に映っているのか……

と不思議になるような写真だった。
直立したまま縛られたわたしの、ポアントで立った足だけ。
縄を解かれたあと、放心しながら床に横たわるわたしの、縮めた四肢。
首と、そこに墨で描かれた太い線のように走る髪の束。
どれも、わたしの一部なのだ。
縛られた状態での全身の写真は、他の機会でもほとんどなかった。
 (まゆみちゃんのお連れ合いは、わたしの背骨を好んで撮っていた)
でも、たとえそこに縄が写っていなくても、
まゆみちゃんの作品からは「縄の気配」が常に感じられた。
目には見えなくても、まゆみちゃんの写真を手に取ると、
そこには確かに縄が存在したのだ。
サービス判の小さな紙の中に、真っ白く浮き上がったわたしの肩口が見える。
その部分には縄の痕さえついていないが、すぐ下の二の腕に、
ぎっちりと食い込んでいるだろう麻縄が、息を殺しながら迫ってくるのだ。
モノクロのプリントを見つめ、わたしは胸が苦しくなるのを感じる。
すぐ隣で小動物のように愛らしく微笑むまゆみちゃんは、
実は嗜虐的な冷たい目で、わたしの反応を愉しんでいる。

そのあと、セーラー服にブルマ姿で縛られたまゆみちゃんを、
わたしは厳しく責めた。
わたしたちは二人とも、かなり厳しい縛りに耐えられるモデルとして重宝がられていたが、
それでも常に、相手を苛めること、責めることを想像していたのかもしれない。

そこに写ってはいないのに、モデルの感情や表情が、見る者の眼裏に鮮烈に映ってしまう。
まゆみちゃんにはもっとたくさんの写真を撮って欲しかった。

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[ 2017/10/21 14:57 ] 緊縛写真 | TB(-) | CM(-)

マリリン・モンロー そのままの魂を抱きしめたい

5年前に65歳で亡くなった叔母は、マリリン・モンローが大好きだった。
告別式の際、夫である叔父が棺に入れたレコードや写真集の中には、
現在では入手困難なものがいくつもあったらしく、
葬儀会社の人が
「勿体ないですよ!」
としきりに小声で訴えていたが、あれは「思い出の品」だからという意味ではなく、
「ネットオークションで高値が付く」ということだったのだと、最近思い至った。
一緒に灰になってしまうのに……と思ったのだろうか。卑しい人だ。
花に囲まれ、おだやかに横たわる叔母の閉じたまぶたが、
ピクリと動いたような気がした。とても可愛らしい女性だった。

1985年発売のこのワイン、1990年頃には事務所の近くで5千円くらいで売っていた。
だから当時はたくさん買って、親戚やお世話になった人へプレゼントしていたけど、
それが今はこんな値段で!!
転売ヤーって、思い出もなにもボロボロにししてくれちゃうなぁ。
マリリン・メルロー


いや、こんなことを書きたかった訳ではない。
わたし自身、特にマリリン・モンローが好きだということはなく、
いわゆる「普通に好き」で、「知ってはいる」程度の知識しかなく、特別な想い入れももちろんなかった。
でもその叔母のことを考えていて、しばらく前に観たマリリン・モンローの映画を思い出してはっとしたのだ。
その映画の中で、マリリン(役の女優)は
「母親は女の子に、こう言わなくちゃいけないわ。かわいいって」
と寂しげに言っていた。
「ママが精神病院に行ったあとは、里親をたらい回し」
「本当の父親が誰かなんてわからない」
そう話す彼女(マリリン本人)が求めていたのは、母親から愛されることだったのではないかと、
初めて思った。
結婚と離婚を繰り返しても、「愛している」と言ってくれる男のそばにいても、
心は決して満たされない。
その頃の彼女は、自分が何を必要としてるのか、きっと解っていなかったのだろう。
彼女が切実に欲しかったのは、やさしい母親の胸。
その温かさに抱かれて、甘いふわふわした夢を見ること。
髪を撫で、そっと頬を包んでくれる、ママのやさしい手。
意識の外に追いやったそれは、決して姿を現してはくれない。
だから欲しいのは、手に入れたいのは、注がれるべきなのは、
自分を求める男たちの、声や視線や、立場や富。
そう思い込んで、それらを差し出されることこそが
「愛される」ことだと錯覚しようとした。
でも、どんなに素晴らしい女優になっても、自分を騙すことはできなかった。

何でも緊縛と結びつけて考えるばかなひと。と思われるかもしれないが、
もしも、満たされない心を抱いて漂い続ける彼女が
緊美研に遊びに来たとしたら・・・
世紀の大女優でも永遠のセックスシンボルでもなく、
ただの、ひとりぼっちの寂しい女の子として緊美研に出会えたとしたら。
そんな奇跡が起こっていたら、
彼女はあの若さで死ぬことはなかっのではないかと、そう思うのだ。

マリリン・モンローでもノーマ・ジーンでもなく、
名前も立場も年齢も……何もかもを取り去ったそのままの彼女を
濡木痴夢男が縛ったとしたら。
溺れるように漂いつづける寂しい心を、チクチクした麻縄で抱きしめてあげられたら。
きっと彼女は、その繭の中で幻のママンと邂逅し、
いちばん欲しかった無償の愛を、存分に味わうことが出来ただろう。
そしてずっと長生きし、美しいまま可愛いお婆さんになって、
たくさんの人生を演じてくれたに違いない。

自殺だとか暗殺だとか、色々なことが言われているが、
きっと彼女は、これ以上年を取って、
外見の美しさが衰えてしまったら、
男からも女からも見向きもされなくなるのはわかっている。
そんな恐ろしい未来にはとても耐え切れないと、
残りの命を一晩で使いきってしまったのではないか、
そんな風に想像する。

なんでも緊縛が解決するなど、もちろん思っているわけではない。
でも緊美研は、寄る辺なく漂いつづける、夜光虫が放つ光のような
自信がなく弱々しく、そして無自覚に愛を渇望する魂をそっと抱きしめたいと、
いつでもドアを開けて迎える準備がある、そんな場所でありたいと願っている。


【緊美研作品セール】続行中でございます
◆9月11日(月)から9月末日23時59分まで
◆1800円の品は1000円
◆それ以外の品は全品半額
にて販売いたします。

◆備考欄に必ず「ブログを見た」とお書きください。 

濡木痴夢男の緊縛を、できるだけ多くの方に知ってほしいと思っています。
ご注文・お問い合わせお待ちしています。

緊美研オンラインショップ

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[ 2017/09/15 02:42 ] 思うこと | TB(-) | CM(-)

死亡診断書とDVDのセール

昨日、九月九日は濡木痴夢男の命日だった。
これで丸四年が経ったわけだが、今年になってようやく、
せんちゃんの不在を受け容れなければならない出来事があった。

ある人から、死亡診断書を見せていただいたのだ。
「これで信じられる?」
と心配そうにわたしの顔を覗き込むその人に、
「信じられないというのとは、少し違うんです。なんというか……」

そう、なんというか、生身の人間としてのせんちゃんが死んだ、
というのは解っているのだ。それは充分理解していた。
わたしがぐずぐずとくすぶっていたのは、
やはりその死体を見なかったせいだと思う。
本人の字で書かれた死亡通知のハガキが届いても、
多くの人が話題にしていても、
みんなを騙して、せんちゃんはどこかでほくそ笑んでいると、
そんなふうにぼんやりと思っていた。

でも、死因や医師の所見などが汚い字で書き込まれた用紙を見ていたら、
その事実だけが、じわじわと身体にしみ込んでくるのを感じた。
もしもひどい最期だったなら、そんな事実は知りたくない。
せんちゃんはせんちゃんらしく、濡木痴夢男として死んでいってほしい。

名前も年齢も、立場も仕事も、外側の一切を取り払ったそのままのせんちゃんは、
一体どこへ行ったのだろう。
わたしはきっと、これからもそんなせんちゃんを探しながら生きてゆくのだと、
お腹の底の方から温かい力が沸いてくるのを感じながら思った。



【緊美研DVD・セールのお知らせ】
よく初めて会う人から、
「若い頃は緊美研ビデオが高くて買えなかった」
というお話をされる。
緊美研ビデオが初めて出来たのは、バブルの頃だったので、
どこのメーカーのビデオも高かった。
でも、緊美研ビデオはたった30分の作品で1万円もした。
「例会ではもっと長く撮影してるんだから、そんなに短くしたらもったいない」
というと、
「そんなに長くしたって、どうせみんな見ないよ」
とせんちゃんは言ったのだ。
しかも、二人のモデルを15分ずつ出しての30分。
どちらかのモデルが好みじゃない場合は、
「いらない女に5千円も使わなくちゃならないのに」
と、わたしは反対した。
この編集は、歌舞伎の一幕見を意識し、
緊美研例会の中で盛り上がったシーンや、
縛り・責めが厳しいシーンを選んで見てもらおうということだった。

そんな説明はどうでもいいか……。
「若い頃は高くて買えなかった」人や
「今まで緊美研ビデオを見たことがない」人たちに
ぜひ見て頂きたいと思い、セールを行います。

◆9月11日(月)から9月末日23時59分まで
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◆それ以外の品は全品半額

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濡木痴夢男の緊縛を、できるだけ多くの方に知ってほしいと思っています。
ご注文・お問い合わせお待ちしています。

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[ 2017/09/10 21:39 ] 濡木痴夢男 | TB(-) | CM(-)

あの日、目に焼き付けたきみは、いまも笑っているだろうか

緊美研例会で、縛られる前のモデルを撮るのが好きだった。
家を出たその服装のままで、スタジオの薄暗い隅に立たせて会話をしながら。
ここに参加しようと思うまでに、どんな生を生きてきたのか、
家で支度をしながら、鏡に写る自分を見つめて何を思ったか。
濡木痴夢男の縄で縛られて、どんなことを感じたいか。

いまの自分は、もうじきいなくなるよ。
濡木の縄を知ってしまったら、それ以前の自分にはもう戻れない。
覚悟はいい? 
怖くはないの?
そんなことを話しながら、彼女たちの「最後の表情」をフィルムに閉じ込める。
(あの頃はまだ、フィルムカメラを使っていた。会員たちはみなデジタルに移行していたけれど)
緊美研39
会員たちの話し声があちこちからぼそぼそと聞こえ、
濡木が麻縄やその他の責め道具をバッグから出す気配を感じ、
他のモデルのさまざまな感情が複雑に混じり合った視線を受け止め、
彼女たちはわたしにそっと微笑んでくれた。


緊美研のモデルは、一般女性も多かった。
まだインターネットが普及していなかった頃、パソコン通信の中に「緊美研」は存在した。
そこで初めて麻縄緊縛に興味を持った女性たちが、例会に参加することもあった。
そんな人たちに対して、会員たちはとても気を遣い、
緊美研の素晴らしさを理解してもらうことに一生懸命だった。
緊美研24
縄に興味を持ってもらうこと、縄を好きになってもらうことは、
会員たちにとって「自分を肯定し、受け容れてもらうこと」と同じだったのかも知れない。
男性の身体を持った会員たちであるが、緊美研例会において、
彼らの心は男でもあり女でもあり、あるいはどちらでもない「縄好き」として、
同じ嗜好を持つ者と認め合いたかったのかも知れない。

現在さまざまな映像作品に出演する、人気のモデルや女優たちは、
誰かが強烈に魅せられた「ある作品」の中の「彼女」なだけではなく、
別の作品では当然別の女を演じるわけで、
それを知りたくないと思っている誰かの目に触れる機会もあるだろう。
つねに輝いてる彼女たちを追い続けるのは、
それはそれで辛く苦しいこともあるのではないかと思う。
緊美研36
緊美研に出演したモデルの中には、職業モデルではない一般女性も多く存在した。
何度も続けて参加した人もいれば、一年に一度来る人もいたし、
たった一度だけで、そのあとは連絡をとれなくなった人もいる。

もうすでに亡くなっている人もひとりではない。
写真やビデオの中で、笑ったりはにかんだり泣いたりしている彼女たちは、
いまどうしているだろう。
濡木痴夢男の縄に酔い、閉じた瞼の下で眼球をゆるゆると動かしながら、
あぁ、きもちいい……
と甘い吐息とともに洩らした彼女たちは、今も元気でいるだろうか。


緊美研の初期に何度も登場し、その後しばらく行方がわからなくなったモデルがいた。
男性問題で苦しんでいたらしいのだが、
それを聞いて濡木痴夢男は言った。
「他人から見てどんなに酷い男でも、それで本人が幸せなら仕方ない」
その人の幸せはその人にしかわからない。
傍から見てどんなに不幸でも、彼女がそれがいいと言うなら見守るしかないのだ。

彼女がその男と別れあと、濡木とともに会いに行った。
「待っててくれてありがとう。放っておいてくれてありがとう」
そう言って彼女は泣いて、わたしもその隣で泣いた。
向かいの席で、濡木はにこにこしていた。
撮影6
大勢のモデルたちを懐かしんでみる。
たくさん話をした人も、ほとんど目線を合わせてもくれなかった人も、
濡木痴夢男の縄に縛られた女性たちはみんな、
願わくは幸せでいて欲しい。
通俗的な幸せでなくてもいいから。
その人だけにしかわからないカタチでもいいから。
そして、時には濡木の縄を思い出して欲しい。
あの日、あなたたちの身体と心を何よりも強く、愛情を持って抱きしめてくれた縄は確かに存在したんだよ。

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[ 2017/09/02 04:17 ] モデルのこと | TB(-) | CM(-)

緊美研オンラインショップよりセールのお知らせ

緊美研オンラインショップです

◆8/20まで:1800円のDVD→1000円セール開催のお知らせ
いつもご利用くださいまして、ありがとうございます。
8/18~8/20の3日間、「廃盤一部タイトル特価」「オンラインショップ 1800円のDVD→1000円セール」を開催中です。

期間限定セールのカテゴリをご覧ください。
・「緊縛浪漫」「緊縛イズム」などのタイトルは8400円→2880円に値下げ済みです。
・1800円のDVDは、ショップ上の金額はそのままです。返信メールにて正しい金額をご確認ください。
・点数制限はありません。
・全てのお支払い方法でご利用頂けます。
・ご注文から24時間以内に、正しい合計金額を記載した返信メールを送信致します。


お支払い方法や発送などについての詳細はこちらの お知らせ をご覧のうえ、ご注文ください。


明日(20日)までのセールです。
まだ「濡木痴夢男の緊美研ビデオ」をご覧になったことのない方も、
この機会にぜひご利用くださいませ。
お待ちしております。

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[ 2017/08/19 05:59 ] お知らせ | TB(-) | CM(-)

マニアから学ぶこと・4 涼子さんと佳行さん

前回はこちら

小さなカメラは佳行さんの邪魔をせずに、吐息でレンズが曇るほど涼子さんに近づくことが出来る。
淡い珊瑚色の口紅をつけた涼子さんの唇が、縄の動きに合わせてゆるく閉じたり開いたりしていた。
そこから洩れる小さな喘ぎ声は、佳行さんの耳に届いているのだろうか。

はぁ、あぁ……。
はぁ、あぁ……。

と繰り返される切なげな吐息と声。
それをそばでずっと聞いているうちに、わたしも涼子さんのタイミングに合わせて呼吸していた。
繰り返される甘い喘ぎと苦痛を表す呼吸は、平常時のそれよりもずっと速く、
浅く短い呼吸を続けていたわたしの脳は酸欠になり、
頭がクラクラしてきたと思っているうちに、指先の痺れも自覚する。
このままでは、まずい。
撮影者が、責められる女性と一緒に縄酔い状態になってしまうなんてシャレにならない。
わたしは一旦お二人から離れ、全身が収まる位置まで畳の上を後ずさった。

離れて見る涼子さんと佳行さんは、背景の襖絵からくっきりと浮かび上がり、
とても美しかった。
北斎の富嶽三十六景に似た、力強い波頭が描かれた襖だ。
碧瑠璃いろの大きな波から、真珠のような乳白色の飛沫が散っている。
その前で、涼子さんは薄いローズピンクのスカートを丸く広げ、
ツルツルしたたっぷりの生地に、太腿を舐められる感触を味わってるようだ。
括られた足首だけが、スカートの裾から覗いている。
両足を小さくまとめるようにくっつけ、足指はすべて内側に強く曲げられていた。
ウエストにかかる縄が、梁から下がった麻縄の輪に結び付けられると、
むっちりした白い身体の中心が、畳から浮いてゆく。
涼子さんは足指を反らしたり曲げたりしながら、首をのけ反らせた。
白い首。
汗でそこに張り付いた、数本の髪。
はだけたブラウスからのぞくベージュのブラは、豪華なレースが眩しいほどだ。
鎖骨の窪みに、うっすらと滲んだ汗が留まっている。

佳行さんは胸縄をぐいっと掴むと、それを一つにまとめて縄尻を梁にかける。
そしてスカートに包まれた右脚を持ち上げ、膝を縛ってそれも吊り上げた。
涼子さんは辛そうに眉を寄せ、畳の上に残された左足の爪先で鮮やかなヘリを掻く。
頭が少し下がったことで、白い頬が急にばら色に染まってゆく。
自身の顔が熱くなったことを自覚すると、涼子さんは急に恥ずかしそうに身体を縮めた。

「いや、見ないで。こんな顔を、見ないでちょうだい……」

振り絞るように言う声を、佳行さんの意地悪な言葉がさえぎった。

「見られたいのはわかってるんだ。ほれ、ちゃんと顔をカメラの方に向けてみろ」

濡木痴夢男とそっくりの、やや芝居がかった言い方だった。
そうか。
さっきから微妙な既視感 に背中がゾクゾクしていたが、そういうことか。
涼子さんと佳行さんを見ていると、「緊美研ビデオ」を見ているような錯覚がある。
ご夫婦で二百本近くもの緊美研ビデオを見ているのだから、当然と言えば当然かもしれない。
それぞれが描く理想の「縛る男」と「縛られる女」。
たくさんの緊美研ビデオを見て、その中に入りたい、その世界に浸りたいと、
何十年も切実に思ってこられたお二人が、いま緊美研の世界を再現しているのだ。

わたしは胸が熱くなるのを感じ、それから頬を伝った涙が顎から零れ、
ぽたりと微かな音をたてて畳に落ちるのを見ていた。
美しい畳を汚してごめんなさい、と思いながら、
(せんちゃん、こんな素敵なマニアの人と出会えたよ。
緊美研をやってきて、本当によかったね)
と、いまはもういない人に心の中で話しかけた。

細く開けた障子の隙間から、初夏の香りが漂ってくる。
お庭の緑がまばゆく、紫陽花の濃いブルゥが切なかった。


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[ 2017/08/01 20:53 ] 緊縛美研究会 | TB(-) | CM(-)
プロフィール
春原 悠理 Youri Sunohara Facebook
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濡木痴夢男の緊縛美研究会の主宰です。
好きなもの:ねこ、チョコレート、雑多な読書、映画鑑賞

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