わたしが初めて緊縛美研究会でモデルをしたのは、1987年の初夏でした。
このブログに書いたことがありますが、それは緊美研例会では初めての一泊での撮影会で、
東京都五日市市にある、広い日本庭園が美しい旅館で行われました。
せんちゃんとは、それ以前に雑誌の撮影で何度もお会いしていたので、
知らない縛りの会(もっとも、「縛りの会」というものが存在すること自体、わたしは知りませんでした)
からの依頼でしたが、警戒することなく参加することができました。
仲良しだったモデルの杉下なおみちゃんの紹介で、
当日はなおみちゃんもモデルとして来るよ、と電話をしてきた不二さんが言いました。
それから次の月もその次も、毎回わたしはモデルとして呼んでもらいました。
毎月同じモデルが縛られるなんて、参加者はそれで満足なのだろうかと
心配になりましたが、濡木痴夢男が本気で縛れるような、
厳しい縄と責めを受けられる人は、そうそう多くはないのです。
余談になりますが、SMクラブで働いていた知り合いの女の子から聞いた話によると、
いわゆる女王様役の女性はやはり綺麗な人の方が人気が高いけれど、
M女役の責められる女性は、外見よりも内容をどれだけこなせるかによって人気が変わるのだそうです。
「だから、うちのナンバーワンの子はすごいブスだもん。
でもね、あの子はなんでも受けるから指名が多いんだよね」
なるほど、と妙に納得したのをおぼえています。
あれ、また何を書いているのかわからなくなりますね。
【どうして麻縄なのか】今日書きたかったのはこれです。
そうだ! 緊美研と出会うまでに、
わたしもSM関係の仕事は雑誌やビデオ、映画やショーなど、
少しは色々な経験をしたのだと思い出したのです。
その中で、SM雑誌の撮影ではもちろん麻縄が使われましたが、
きちんとした「縛り係」のいない適当なメーカーの現場では、赤やその他の色の綿ロープや、
化学繊維を多く含んだロープが使われることもあったのです。
前述のSMクラブで使われていたのも赤い綿ロープでした。
赤いロープは、見た目がきれいで柔らかそうで、女の子の受けもよく、
縛る側も扱いやすいと感じるようですが、わたしは好きではありません。
確かに、一本目のロープが肌に触れた瞬間の刺激は、
柔らかくて温かみさえ感じましたが、それが手首を括り、
背中の高い位置においた手首から乳房の上を一周し、
さらに胸の下を一周して手首に戻る……。
その、一本目を縛り終えた段階で、もう手首がギリギリと痛んだのです。
これは、縛る人が上手くないからということも当然あるでしょう。
麻縄による緊縛ではない、ヴィジュアル重視のSMモノです。
縛ることが目的なのではなく、女を動けなくするならなんだっていいのです。
それこそ結束バンドでも。
社長秘書のフリをした女スパイ(笑)の役ですから、白いブラウスに黒いタイトスカートでした。
白く光沢のある生地に、赤いロープは鮮やかに映え、
これから様々な拷問を受ける絵面としては、それでよいのかもしれません。
でも、表面が柔らかいくせに、この痛さはどういうことだろう。
何か中心の芯になる部分に硬い素材が使われていて、
それをコットンの繊維が覆っただけ、という感触なのです。
だから、縄に体重を預けてもある部分だけがとても痛く、縄酔いなどとは程遠い縛りでした。
この時のロープが、たまたまそんな作りだっただけなのかもしれないと思いましたが、
それ以降、赤い綿ロープはいつも同じで、スタジオの隅にそれが無造作に置かれていると、
気が重くなるのでした。
緊美研の例会で、何度も「なぜ麻縄なのか」という話が繰り返されました。
古くからのマニアという訳ではなく、最近SMに興味を持ったばかりだという人が参加したときなど、
せんちゃんはその人の疑問に丁寧に答えてゆきます。
それは言葉で説明することだったり、実際にせんちゃんの麻縄に触れてもらうことだったり、
緊縛の実際を見せることだったりしました。
「どうして麻縄なのか」
なによりも、写真にした時にいちばん馴染むからです。
モデルの服がどんな色柄でも、どんな肌でも、麻縄の色は相手を選びません。
そして、「女を縛るということがどういうことなのか」。
それを理解していれば、自ずと麻縄を手に取るはずなのです。
さらってきた女を縛り、吊り、責め上げる。
『女をいぢめると、いろいろな顔をするからねェ。がまがえるの尻を押すようなものでね。
とにかく生きた人間をおもちゃにするくらい面白いことはねえ。 伊藤晴雨』

これは緊美研通信に掲載された、鵜藤恵さんがご自身の文章の冒頭に引用された
伊藤晴雨の言葉ですが、「女を縛って責める」とは、こういうことなのです。
納屋の壁に掛けられた、汚れた麻縄――。荷物を縛る麻縄――。
それで人間の女性を縛るのです。
「生きた人間をおもちゃにする」
「緊縛」で表現されることは、そんな恐ろしいことなのです。
そして、縛って責められることをひっそりと好む女性もまた、
人間扱いなどされなくてよい、一個の荷物のように、モノのように惨めな扱いをされたいと、
心の奥底で望んでいたのです。
それは、性的な快楽とはまた別のものです。
もっと深層心理の奥深いところ、誰もが自覚していない部分で渇望する、
自分が人間になる以前の小さな意識が求めているものなのかもしれません。
そして大切なこと。
「どうして麻縄なのか」それは、麻縄が実は縛られる側の身体に一番やさしいからです。
これも当然、縛る人の上手い・下手によりますが、せんちゃんの縛りでは、
最初に縛られた手首は、あとから何本縄が足されてどんな厳しい吊りポーズになり、
どれほど長い時間縛られ続けていたとしても、
そこだけに縄がきつく食い込んで痛むということがありません。
手首の縄はいつでも、あらゆるポーズに対応できるよう、ある程度のゆとりをもって掛けられます。
綿ロープのときに感じたように、骨にギシギシ食い込んでくるような不快な痛みはありません。
麻縄の魅力は、挙げだしたらいろいろあるのです。
匂いもそのひとつです。
でも、だいぶ長い記事になってしまったので、また別の機会にします。
そして、縛られた際の感想はわたしの主観ですので、別の感想を持つ人も当然いることでしょう。
久しぶりに、そんな話を誰かとしてみたいと思う夏の夜です。
◆ お知らせ ◆緊美研のFANBOXが出来ました。
FANBOXとは、月額2000円からお楽しみ頂ける緊美研の新しいサイトです。
「緊縛モノクロ写真」「濡木痴夢男のブログ再掲」「緊美研通信より」
など、貴重な資料や、初公開の濡木痴夢男の手書きメモまで、
マニアのための情報を発信していきます。
春原悠理の、ここには書かない限定ブログ記事もあります。
ぜひプランにご加入ください。
↓こちらのバナーより pixivへの新規会員登録(無料)が必要です。
◆アダルト動画DUGA(緊美研ビデオのダウンロード販売はこちらから)